津堅地名考6 グディは「崖」か
ぼくたちは音の可能性を頼りに、
グディキン(gudikin)という語を復元し、
そこから、チキンをはじめとする地名のバリエーションを想定してきた。
では、グディ(gudi)は何を意味するだろうか。
というより、グシの「崖」という解釈をもともと手がかりにしてきたが、
「グディ(gudi)」は、「崖」の語源たりうるだろうか。
まず、アイヌ語の「崖」である「ピら(pira)」は、
琉球弧のなかでも「ピら(pira)」が語源と思われる地名を
散見するけれど、「グディ(gudi)」は、
どう転んでも「ピら(pira)」にはつながりそうにない。
pira ピら
【H】がけ;土がくずれて地肌のあらわれている崖。
(『地名アイヌ語小辞典』知里真志保)
「グディ(gudi)」が、荒唐無稽な言葉ではなく、
「崖」に結びつく可能性はあるだろうか。
たとえば、奄美の方言で、「崖の崩れているところ」を指した
「クズぃルぃ」という語が紹介されている。
アマ ヌ クズィルィー アム ヌ フルバ アブネサット。
あそこ の 崖は 雨 が 降ると 危ないよ。
Webの表記通りには書けていないのだが、
「クズ」で「崖」の意味も含意させているのが面白い。
この、(崩れる~崖)としての「クズ」であれば、対応できると思える。
gudi
↓「グ」が五母音化して「ク」
「ディ」の転訛で「ジ→ズ」
kuzu
と、「グディ」の「クズ」への変化は想定することができるからだ。
ぼくたちはひとまず、「グディ(gudi)」を「崖」の意味であると考えよう。
※「津堅地名考1 チキンとは何か」
「津堅地名考2 手がかりとしてのウティキン」
「津堅地名考3 キンは山」
「津堅地名考4 グシは崖」
「津堅地名考5 グディキン(gudikin)」
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