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2007/08/24

どんな小さな島も世界を持つ

奥武島と書いて、おうじまと呼ぶ。
『海と島の思想』で辿っているのは、
沖縄本島の南部の「奥武」だ。

というのも、琉球弧には、七つの「奥武」の地名があるというから。

野本さんは、仲松弥秀の「墓地」としての「奥武」の考察を引いている。
これは、『日本の地名』の「沖縄の青の島」で、
谷川健一も考察の起点に置いたものだ。

 (一)陸(主島)から比較的近いところにある。
 (二)現在は人が住んでいる場合も、かつては集落のない島であり、
    人は住んでいなかった。
 (三)いずれも小さな島である。
 (四)古代の、或は古代からの墓地である。

 (中略)
 奥武地名の島は、陸地に近接した小島をなして乏水性の島であり、
 古代生産性の低い時代には集落立地には不適なところではあるが、
 葬所としては最適な条件を持っていたと思う。
 おそらく沖縄の古代人は最初は集落近い場所に
 葬所を選定したであろうが、
 次の時代には、もし近接した小島があった場合には、
 その小島を葬所としたのではないだろうか。
 このような小島が、“奥武”であって、
 この名称は葬所としての機能の面からの名付けであろうと思われる。
 (『古層の村』1977年)

奥武が葬所であるとして、
それならなぜ「青」を意味する「オー」と呼ばれるのだろうか。

それは、谷川健一の要約が分かりやすい。

 洞窟墓の中の死者の住む世界は、
 真暗でもなく、赤や白のように明るくもなく、
 その中間であるぼんやりした黄色な世界であることから、
 それを青と称したと仲松は考えた。
 沖縄では近代に入っても黄色という呼称はなく、
 黄色をアオと呼んでいた。
 (『日本の地名』1997年)

なるほどなあと思う。

黄色の葬所としての青の島だ。

離島の集合地としての琉球弧(あるいは日本)は、
どんな小さな島にも名があり、名には意味がある。
その初源は、地勢を地名とするが、
時代がくだれば、さまざまなバリエーションを持つようになる。

奥武島は、色から名付けられた島だが、
意味は色であっても含意するところは、墓地である。
これは、他界概念が空間化されたことの表出の一形態だ。

ある重たい意味を担ったのが、琉球弧の「青の島」だ。

 ○ ○ ○

沖縄南部の奥武島の西側にある瀬長島は、
奥武島と同じく、どんなに小さくても島には名があるという意味では同じだ。
しかし、瀬長島は、奥武とは逆に生者の世界、
拝所もあれば、生活の場もあった。

それを分かつのは、奥武が洞窟の多い岩場であるのに対して、
瀬長島が、アンジナと呼ばれるように、
砂場である違いに起因しているのかもしれない。

野球場と比べられるほどの小さな島にも世界がある。
島はどんなに小さくても、世界を持つ。
それはなんて大きなことだろう。



『海と島の思想』 (野本三吉)
Ⅱ 戦争の記憶・いのちの記憶
16 あんじなの島・瀬長
Ⅲ 古代信仰と女性原理
27 青の世界・奥武島



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コメント

クオリアさん

奥羽地方のアイヌの歴史との関わりは
ないのでしょうか


投稿: sattyann | 2007/08/24 23:52

おはようございます。

とても興味のある考察ですね。

 読み続けているうちに
    琉球にとりつかれてしまいそうだ。

       めがね  の情報もありがたく
              拝見しています。

   今日からお盆
       初盆の方もおられますね。

    先祖供養をしたいと思います。

投稿: awamorikubo | 2007/08/25 04:23

sattyannさん。

それは追究したいテーマですね。面白い。
ぼくはまだ琉球弧を見るので手一杯です。

谷川健一は本土の「青」の地名を、
越前越後の「越の国」まで辿っています。
谷川によれば、海人の足跡なのだと。

投稿: 喜山 | 2007/08/25 08:59

awamorikuboさん。

パーパー、アチャがモイして、
先祖供養の言葉が、身近な切実なものになりました。

投稿: 喜山 | 2007/08/25 09:04

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