« 居酒屋与論島(ゆんぬ)のゆうべ | トップページ | 「沖縄問題」とは何か 3 »

2007/08/17

「沖縄問題」とは何か 2

これに対して、『「沖縄問題」とは何か』での高良はこんなトーンだ。

たとえば、「日本復帰とは何だったのか」で書いている。

 よくよく考えると、七二年の沖縄の日本復帰は、
 圧倒的な軍事拠点である基地オキナワを
 日本国憲法体制が受け入れたということである。
 アメリカ側の基地の整理によって生じた余白に
 自衛隊が進駐したことを含めると、
 沖縄の復帰の瞬間に、
 憲法の掲げる平和主義はその内側に巨大な軍事拠点を
 含んだことになる。
 さらにまた、憲法がその理念の一つとする国民負担の
 公平性から言えば、沖縄という地域に基地負担が
 過重なかたちで偏在するという現実をも、
 憲法体制は制度として受け入れた。
 アメリカ統治下にあるかぎり問題とはならなかった事態が、
 沖縄の憲法体制への参加によっていわば国内化したのである。
 
 (中略)憲法が規定する国家像の何が問題なのか、
 それに代わるどのような国家像を画くべきなのか。
 試されているのは、沖縄県民を含む日本国民の人智の側である。
 (「『復帰』の瞬間に抱えた矛盾」高良倉吉)

この文章は、日本国家からみたら、沖縄の復帰はどう見えたか。
どう見える側面を孕んでいたかということを繰り入れて書かれている。
この気づきは、一度、沖縄の立場を離れてみて見えてくるもので、
高良の議論に深みをもたらしている。

その結果、日本復帰が、ひとつ沖縄だけではなく、
日本人全体で考えるべきこととして、
課題を占有せず、本土へ橋渡すことができているのである。

 ○ ○ ○

また、「テロリズム」のテーマではこう応える。

 一九三四年(昭和九年)二月、
 沖縄連隊区司令官の石井虎雄大佐が
 陸軍省と参謀本部に提出した意見書、
 「沖縄防備対策」はまことに示唆的である。
 太平洋と東シナ海を結ぶ軍略上の枢要な位置にありながら、
 当の沖縄住民の郷土防衛意識の薄弱ぶりを大いに
 嘆いてみせている。
 そのうえで、原因を彼らの風俗や習慣を背景とする
 「惰弱」な性格にある、と石井大佐は談じざるをえなかったのである。

 大佐の言う防衛意識の薄弱ぶりや「惰弱」な性格がもし
 「われわれ」の属性だとすれば、
 戦士としてのテロリストは生まれないのであろう。
 しかし、大事な点は、大佐の悲憤慷慨には同情するが、
 「惰弱」ゆえの防衛意識の薄弱ぶりこそ
 「わさわれ」の側の心底の武器だったことだろう。
 「敵」に対し鋭角的な対立を得意とするのではなく、
 また、暴力の行使を至上化するのでもなく、
 ただひたすらにテロには傾斜しない
 「惰弱」な抗議行動に終始してきたからだ。
 沖縄の意思のテロへの傾斜は、
 小説や評論などの言説空間止まりで良いのだと思う。
 (「『惰弱』こそを武器に」高良倉吉)

沖縄はテロリストを絶対、生まないとは思わないが、
「惰弱」さを積極的に評価する視点は健やかだと思う。
少なくとも、われわれは「惰弱」ではないと否定するより、いい。

「沖縄差別」というテーマでは、
仲里は「終わらぬ植民地主義」と題し、
高良は「制度としての差別は存在せず」と題している。

タイトルだけで、両者の主張の違いは一目瞭然だ。

ヤマトゥンチュとウチナーンチュという、
例のものいいにしても、
その構図で言う権利は常に沖縄の側にあり、
しかもこの物言いのなかに、
ヤマトゥンチュは均質化されるという指摘を、高良はしており、
沖縄でもやっとこんな発言が出てきたと嬉しくなるところだ。

 つづく

 ※「『沖縄問題』とは何か」1』



|

« 居酒屋与論島(ゆんぬ)のゆうべ | トップページ | 「沖縄問題」とは何か 3 »

コメント

早く当該書籍を読んでみたくなります。
書評に発露している喜山さんの見解にもとても刺激を受けます。

喜山さんとお会いして、お話してみたくなりますよ!

まあ、僕は単線型の猪突猛進的議論をしてしまうので、
喜山さんにやんわりかわされてしまうような感じかな~、
なんて想像しながら書評を楽しく読ませていただいています。

投稿: NASHI | 2007/08/18 11:36

NASHIさん。

ぼくは直球ばかり投げるので、あぶなっかしいとよく言われます。
かわすという芸当は、難しそうです。(^^;)

ぜひ、お話させてください。

投稿: 喜山 | 2007/08/18 11:59

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/87956/16125774

この記事へのトラックバック一覧です: 「沖縄問題」とは何か 2:

« 居酒屋与論島(ゆんぬ)のゆうべ | トップページ | 「沖縄問題」とは何か 3 »