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2007/07/22

『ドルチェ - 優しく』の調べ

ぼくはこの作品を観たいと思って、机の上に立てておいた。
けれど、走りっぱなしの日常のなかで機会を逸してきた。
日常の時間の流れをどこかで切らないと入っていけそうになかった。

思い立ったらこんどはマシントラブル。
DVDを観るのはこれが初めてのパソコンで、
起動するのに格闘、数時間。やっと鑑賞できた。

『ドルチェ - 優しく』。

Dolce










アンマー(母さん)という島尾ミホの第一声を聞いたときは、
もう作品世界のなかにいる、そんな惹き込む力があった。

島尾ミホが島尾ミホを演じるという難しいテーマのなか、
島尾ミホが発したのは、十代の頃に母を亡くしたつらさだった。

次に、「ミホ、あなたは神戸に行かなければなりません」
という敏雄との生活を促す父の決意の言葉。

そして、マヤさんのこと。

島尾ミホにしかできない、
島尾ミホにしか言えない、言葉たち。

ぼくは、初めて聞く島尾ミホの声が、
可愛らしい幼さを残しているのに驚いた。
美しい老婆から発せられるのは、まるで乙女の声だった。

舞台となる部屋は薄暗く、外は長雨が降りしきり、
それが返って懐かしく、強く奄美を感じる。

思えば、ぼくは生前の島尾ミホとマヤを観ていることになる。
これはお二人の置き土産かもしれないと思った。

エンドロールには、

 TOCИO CИMAO (島尾敏雄)
 MИХO CИMAO (島尾ミホ)
 MAЙЯ CИMAO (島尾マヤ)

とロシア語で文字が流れるのだけれど、
それがとても似合っていた。

作品の日本公開は2001年とあるが、
映像には、1999年とクレジットされていた。
1999年といえば、批評家、江藤淳が逝った年。
考えてみたら、今日は彼の命日だ。

大切な人たちは泉下にある。

そして、明日は父の三十日。
手を合わせよう。

(※「ドルチェ - 優しく」




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