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2007/07/20

ニライカナイの島・喜界島

『海と島の思想』で、
奄美を先に辿っていると、奄美大島が入っていない。

それはないでしょう、と思いきや、
よくみると、沖縄島も入っていない。

そうか、著者が離島めぐりと言っているのは、
奄美大島と沖縄島の本島を除いているのかと、ひとまず納得。

 ○ ○ ○

かくして野本さんは、奄美大島経由で喜界島に向かう。
そして、郷土研究会の西島常吉さんに導かれるように会う。

 西島さんは、喜界島がどのように観られているかを知るには、
 その島名を示す漢字の変化を見ればよいと指摘する。
 かつて、律令制度のできた時代には、
 自分達の勢力範囲に入れようとしてさまざまな位を与えた。
 その頃、「貴海(界)島」と呼ばれていたという。

 しかし、喜界島が力を持ち、独立して反抗するようになると
 「鬼界島」と鬼という字をつけるようになったという。
 従わない島「鬼界島」というわけである。
 流人の島とも呼ばれ、村田新八などがこの島に流され、
 俊寛が流された鬼界ヶ島も、この島という説もある。

 鬼とは本来、人間の力の及ばないもの、
 神霊の力を持つものとされ恐れられていた。
 王府の命令に従わず、しかも力の強い存在。
 それを鬼と呼んだとすれば、
 鬼界島は現在の喜界島だけではなく、
 沖縄や八重山、奄美も含んだ複数の島だったのかもしれない。

「卑種」と「貴種」の狭間を揺れた喜界島の表記。
「卑種」か「貴種」かを決めたのは、大和との関係。
もっと言えば、大和からの見え方によってそれは決められてきた。

そして、野本さんの文脈に従えば、
鬼界島とは、喜界島と琉球弧の二重性を含意している。
鬼界島の象徴として喜界島はある、というように。

 ○ ○ ○

西島さんの言葉の中にこんなくだりがある。

 喜界島は独りぽつんと海上に離れており、
 他島からの影響も援助もなく島内だけで試行錯誤、
 協力していく他なかった。

ぼくはこの言い方は意外な気がした。
与論島からみれば、
喜界島は、「独りぽつんと」あるのではなく、
奄美大島に寄り添っていて、決して単独のようには見えないからだ。

その「独りぽつんと」という感じ方は、
島の一般性かもしれないが、
孤立感の抱き方が、同じ奄美大島の離島に位置する
加計呂麻島にも似ている気がした。

母なる島をそばに見ると、
孤立感が余計にやってくるのだろうか。

そうも思ったが、いや、もっと独自の感じ方なのかもしれない。

考えみれば、琉球弧の始まり(あるいは終わり)を、
ぼくは漠然と奄美大島とみなしているけれど、果たしてそうだろうか。
確かに緯度からみたら、奄美大島がより北に位置している。

しかし、海流の流れや「弧」の流れで琉球弧をみつめれば、
その入口(あるいは出口)にあるのは喜界島ではないか。
いや、島全体としてみれば、喜界島は最初に通過する島である。
喜界島は琉球弧の入口(あるいは出口)なのではないだろうか。

琉球弧の先端として喜界島。
そうみなすと、鬼界島の象徴としての喜界島に合点がいく。

そして、

 喜界島は独りぽつんと海上に離れており、
 他島からの影響も援助もなく島内だけで試行錯誤、
 協力していく他なかった。

この孤絶感の内実が分かってくる。
それは、大和といつも真っ先に交流しなければならなかった
宿命のことを言っているのだ、と。

そして宿命は、対大和だけでなく、
琉球弧内の境界の拠点として、
琉球王朝の国家造山勢力と対峙しなければならなかったように、
対琉球にも及んだのだった。

そうみなせば、喜界島の“試行錯誤と協力”の意味が重たく響いてくる。

ぼくは喜界島への理解をほんの少し深めることができた気がした。


『海と島の思想』野本三吉
Ⅴ 原初的世界との共生
41 ニライカナイの島・喜界島

Ooshimakikai

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コメント

>喜界島は琉球弧の入口(あるいは出口)なのではないだろうか。

まさに境界(フロンティア)ですね。

沖永良部島と与論島は、
中世の考古資料をみていると、
キカイガシマと琉球の境界領域として理解できる部分があるかもしれません。

投稿: NASHI | 2007/07/20 23:02

NASHIさん。

面白いです。
奄美がどんな境界を生きてきたか、繊細にわかれば、
自己認識の揺らぎを理解しやすくなります。
追究、お願いします。

投稿: 喜山 | 2007/07/21 08:57

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