イューガマの謎
なぜ、与論島ではアイゴの稚魚をスクと呼ばずに、
イューガマと呼ぶのだろう。
沖縄でも奄美でも、つまり、与論島の北も南も、
スク(シュク)と呼んでいるというのに。
しかも、沖縄本島の東海岸の宮城島では、
テダスク、ウンジャミ、スク、
西海岸の前兼久では、
ティダハニ、ウンジャニ、シルシュクなどのバリエーションがあり、
それらはスクの種類を区別したものだけれど、
与論では一緒くたに、イューガマと言って済ませているのである。
なぜ、イューガマ、なのだろう。
こう思うのには、竹下徹先生の『ドゥダンミン2』で、
なぜか与論だけ固有の名前がない。
ドゥダンミン男には遠い昔、夢の中か、
おぼろか、「シュク」と聞いたようなもやもやとしたものがある。
どなたかご教示願えればと思う。
と、島の知識人でも知らないことで、
ぼくの無知ゆえのことではないんだと知ったのがきっかけだった。
そしてそれは、スクがひょっとしたら、
シヌグの根拠であるという仮説に出会って、いよいよ謎になった。
なぜなら、与論島で大事な祭儀は何かと聞かれれば、
多くの人がシヌグを挙げるに違いないからだ。
最重要な祭儀の核にある魚について、
スクという名称にこだわっていないのである。
というのも、「イューガマ」は、
「スク」とは別の名づけをしたという意味にならない。
実はそれは、「お魚ちゃん」という意味なのだ。
スクという固有名詞の代わりに、
別の固有名詞を当てているのではない。
スクという固有名詞を、
イュー(魚)という普通名詞に差し戻してしまっているのだ。
どうして、そうしたのだろう。
どうして、イューガマ(お魚ちゃん)と呼ぶのだろう。
謎、である。
つづく。
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コメント
喜山さんの「シヌグの根拠」とかを読ませていただいてから、
僕も「イューガマ」は気になっていました。
「イューガマ」の意味をもうすこし教えていただきたいのですが、
「イュ」と「ガマ」に分離できると思います。
「イュ」は魚ですよね。
「ガマ」は穴という意味でよいのですか。コモリ・クムイと近い意味なのかなと思いました。
直訳すれば、「魚溜まり」というような意味に理解できるのでしょうか。
接岸したアイゴの稚魚の大群が干瀬の溜まりにひしめく様子が、そのまま魚名に付されたのでしょうか。
それも象徴的名称であるように思いますが・・・・。
喜山さんの考察を待ちましょう!
投稿: NASHI | 2007/06/14 22:02
NASHIさん、コメントありがとうございます。
ガマは「穴」。イューガマは「魚溜まり」。
これは素敵な理解ですね。
思いつきもしませんでしたが、
あるリアリティを感じます。
ぼくは、「がま」は「ちゃん」という意味で
受け取っていました。
愛称の「ちゃん」です。ロシア語のビッチと同じ。
だから「魚ちゃん」と言ってるんだと思うんです。
面白いですよね。
投稿: 喜山 | 2007/06/14 22:39