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2007/04/23

タビンチュの位相

与論島では、本土の人のことをタビンチュと呼ぶ。
ヤマトゥンチュとは呼ばない。
ヤマトゥンチュという言葉はあるのだが、
日常的に使うのは、タビンチュだ。

高橋さんの論文を読んで、
沖永良部でもヤマトゥンチュと言うことを知り、
ひょっとして琉球弧ひろしと言えども、
タビンチュと言うのは
与論だけではないかと思った。

タビンチュ。

タビ(旅)という言葉を使うからには、
そう古い呼称ではないと思う。

以前は、観光客が増えて、
タビンチュと呼ぶようになったのかと推測したが、
定かではないし、
昔はヤマトゥンチュと言ったという話を聞いたこともない。

だから、観光地になったから、
タビンチュと呼ぶようになったというのでもないだろう。

少なくとも明治期以降の島人は、
タビンチュと呼んできた。

そう仮定してみる。

 ○ ○ ○

沖縄を知る本土の人には、
与論では、ヤマトゥンチュって呼ぶんでしょ、
と言われることもあった。

ぼくは、違うんだけど、と思いながら、
なぜタビンチュというのか、
自分でもよく分からないし、
ヤマトゥンチュに比べて軽い言葉に思えたりして、
そう思うと、ちょっと混乱して説明が面倒になり、
そうだよ、と答えていた。

そう答えると、
相手の沖縄イメージにあわせることになり、
その分だけ、
ぼくも沖縄の人に近しい見なしを受けるのだった。

それは楽だけど、
座りのわるい違和感を残してきた。

 ○ ○ ○

それにしても、「タビンチュ」という呼び方、
いまは、「いとをかし」だと思っている。

ユンヌンチュ(与論の人)は、
なぜ、ヤマトゥンチュ(大和の人)と呼ばずに、
タビンチュ(旅の人)と呼んできたのだろう。

ぼくは、それはユンヌンチュ(与論の人)が、
島を訪れる人との間に、
対立の要素を入れたくなかったからだと思う。

もちろんタビンチュという言葉は厳然としてあり、
それがユンヌンチュとの区別で使われる。

けれど、そこで「タビンチュ」を使うのは、
ヤマトゥンチュと言うのとは少しニュアンスが変わってくる。

要は、タビンチュには、
ヤマトゥンチュが持っている、
ユンヌンチュとの対立という含みはないのだ。

ヤマトゥンチュ、とくると、
ユンヌンチュ「と」ヤマトゥンチュから、
ユンヌンチュ「対」ヤマトゥンチュまで、
意味の広がりを持つのだが、

タビンチュ、と来ると、
ユンヌンチュ「と」タビンチュの意味しかなく、
ユンヌンチュ「対」タビンチュ、
という含みはない。

「タビンチュ」という言葉は、
対立の要素を抜き取られた
「ヤマトゥンチュ」なのだ。

旅の人は、純粋に旅の人として遇したい。
そういう島人の思いが、
タビンチュという言葉を生んだのではないだろうか。

 ○ ○ ○

だから、ユンヌンチュは特別、
と言いたいわけではない。

この言葉を生んだのには、
沖縄ほどに本土と対立する経緯がなく、
また奄美の内部でも、
奄美大島、徳之島、喜界島ほどに、
薩摩に苦しめられたわけでもない、
という歴史が背景にあると思う。

ときの大きな勢力に、
重要視されずに、
無視されてきた距離感が、
この言葉を醸成する余地を生んだのだ。

でも、そんな経緯があれば、
必ず、タビンチュという言葉を生む
というものでもない。

だから、この言葉を生んだユンヌンチュは優しい、
と思うのだ。




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コメント

こんばんは。
同感します。
ヤマトンチュと言う言い方を祖母の口から聞いたことあるが、自分で使うとしたらやはり対立の立場で使うであろう。
タビンチュの言い回しのほうがしっくりする。

投稿: 泡 盛窪 | 2007/04/24 21:10

盛窪さん、こんにちは。

タビンチュの呼び方には、どことなく、
これそこの旅の方、のような風情がありますね。

投稿: 喜山 | 2007/04/25 08:39

ネットを徘徊していて、見つけました。
突然すいません。
私の島、ヱラブと与論の話、とても興味深いです。
でも、この記事については、1つ言わせて頂ければと思いました(^_^;)

ワァガ島、ヱラブでも『旅の人』は使いますよ♪

ただ、与論とは違う捉え方かもしれません。
ヱラブでは、ヤマトゥンチュもタビンチュも
特別な敵意を持っては使いません。(当たり前かwww)

あくまで、ヤマトゥンチュに慣れた自分の見方ですが、

【タビンチュ≒余所者】

という印象です。
範囲が違うと言いましょうか。
相手の出身地に拠るといいましょうか。
島の人間以外はみんなタビンチュ。
その中でも奄美以南以外の人が
ヤマトゥンチュと呼び分ける人もいます。

そう言うと、「やっぱりヤマトゥには敵意が・・・」
と思われるかもしれませんが・・・
なんせ、隣の徳之島とも仲の悪いヱラブ人。
【タビ】で親和感を表しているとも思えないんです。

排他的と言えば排他的。
必要なものと言えば必要だった表現なのでしょう。

ただ、1981年生まれの私には同じに聞こえます。www

投稿: naganishima | 2008/12/03 14:52

naganishimaさま

コメントありがとうございます。
ぼくもこの記事を書いた後、エラブの人から、エラブでもタビンチュと言うと教えてもらいました。

その方によれば、一度、ヤマトに行って帰ってきた島人をタビンチュと呼ぶというそうです。そういう場合もあるんですね。

よそ者というニュアンスと一緒かもしれませんね。

投稿: 喜山 | 2008/12/04 08:32

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