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2007/04/11

甦る海上の道

谷川健一の『甦る海上の道・日本と琉球』を読みました。
柳田国男の『海上の道』を思い起こさせて、
その谷川版だと期待したのです。

でも、谷川版「海上の道」は意外なところに焦点が当たっていました。

甦る海上の道・日本と琉球

Photo_68








この本の主張は、末尾に集約されています。

 また琉球に統一王朝が誕生するきっかけとなったのは、
 私見によれば、九州から南下した武装勢力であった。
 折口信夫は名和氏の残党としているが、
 その公算はきわめて大きい。
 いずれにしても、琉球社会は、
 みずからの内発的発展によって三山統一にいたり、
 琉球王国を開花させた、
 という従来からある説に組することはできない。
 日本からの影響の大きさを痛感せざるをえない。

 しかし、その根底には縄文時代以来の自然の
 「海上の道」があった。
 この海の道は、日本列島と琉球弧のあいだの
 往来の道であった。
 その道を「物への欲望」を担い、
 「心の渇望」を抱いた人々が
 南北にとだえることなく往き来した。
 そこにはまぎれもなく相互の親和力があった。
 ここにして思うのは、
 幾千年このかたの「海上の道」をかけ橋としてつづいてきた
 日本本土と琉球の縁のふかさ、
 血の濃さである。
 その歴史的意義をあらためて甦らせることを
 ささやかな使命として
 仕事に区切りをつけることにする。

柳田国男の「海上の道」が、
宝貝を求めて琉球を南から北へ渡った人々を、
日本人の起源として構想したものだとすれば、

谷川健一の「海上の道」は、
黒潮に逆らって南下する船舶技術をもった勢力が、
琉球王朝を建国したと構想するものです。

この仮説自体は、折口信夫のものですが、
南島から出土する土器や遺跡、
そして谷川自身の見聞の総合から、
改めてそれを取り上げています。

題名からして、
日本人の起源をテーマにしたものを期待したのですが、
それよりはるか新しい時代に焦点が当たっているのでした。

ぼくは少し期待はずれに思いながら読み始めましたが、
次第に惹きこまれ、
琉球の歴史観を変える仮説の迫力を感じました。


沖縄の人はこの本をどう読むだろう。
ぼくはそのことが気になります。

1993年、NHKで「琉球の風」が放送された時、
日本もやっと琉球の歴史の独自性を
取り上げることができるほどに、
成熟できたのかと思ったのを覚えています。

ただその後、沖縄のなかには、
独自性とアイデンティティの根拠を、
琉球王国の存在に求める人もいて、
そうなると、ぼくなど、
次第に気持ちは醒めていった気がします。

ぼくは、琉球は内発的には、
統一国家を形成する必然性を持たなかったとしても、
それこそが琉球弧の特徴ではないかと思えます。

ここには、離島苦と亜熱帯の豊かな自然の
両方の条件が大きな意味を持ってくるでしょう。

この本を読んで、ぼくは、
統一国家を形成する前に
琉球弧が大事に育んできたものをこそ掘り下げる、
という自分自身の南島論のテーマを
より鮮明に確認する思いでした。


ところで、奄美大島、喜界島、徳之島と、
奄美の役割を重要なものとして取り上げているのですが、
見落としがなければ、
この本のなかに与論島は一度も登場しません。

与論の歴史へのかかわりが
改めて見えてくるようで印象的でした。


追記
本の帯には、「九州の倭寇が、沖縄の王に?」とありました。
ぼくはアマゾンで買ったので、帯を見ていなかった。
見ていれば、誤解はなかったでしょう。
帯のメッセージ、大事ですね。



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