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2007/02/28

都市と農村の行方

 共通感性と身体性の二重性は、その二つを育んだ舞台へと関心を
誘う。よく耳にした「都市と農村」というテーマだ。

 都市と農村は、両者の対立として語られてきた。
 農村が普遍的な段階から、第二次産業が勃興し、都市が出現する。
そして農村から都市へ人口が流入し、農村は疲弊し過疎化が進展す
る。一方、都市は、人口の急激な膨張と劣悪な労働条件や公害の反
作用を受け取った。両者は対立の構図を描いたが、ここでの文脈か
らいえば、それは、農村の第一次と都市の第二次の原理が対立の仮
象で現れたということだった。

 人工的自然の普遍化、都市の普遍化という事態を迎えて、対立の
構図は終わる。そこでは、都市がビルの屋上に緑地を配置したり、
商業施設の内部に自然空間を作るなど、都市による農村の内包、つ
まり人工的自然による天然自然の内包がテーマになっていった。同
じく農村では、都市の内包、つまり天然自然による人工的自然の内
包をテーマとするようになった。両者は、包み包まれる関係になっ
たのである。

 天然自然による人工的自然の内包を、ぼくの経験から補足してみ
る。
 ぼくの育った与論島の実家の近くには、小さくてきれいな入り江
があった。そこは白砂が輝き遠浅の珊瑚礁の海が広がる格別の場所
だった。ところが70年代、そこに観光用のホテルが建ってしまう。
ぼくは当初、このホテル激しく憎んだ。ぼくの目には、自然を破壊
するものと映ったからである。つまり、都市と農村の対立の縮図を
そこに見たのだ。

 しかも、ホテルは目の前に海があるにも関わらず、ホテルの手前
のスペースになんとプールを設置したのだ。ぼくはこれにも激しい
違和感を覚えずにはいられなかった。海にもっとも不要であり、海
と矛盾すると思えるものが、ホテルと海との狭間に置かれたのであ
る。なんとも奇妙な光景に思えた。

 ところが、奇妙なのはぼくのほうかもしれなかった。プールが設
置されてみると、旅人は海で泳がず、喜んでプールで遊んでいたの
である。海は観賞用となり、きれいな海を背景にプールで遊ぶとい
う楽しみ方を生んだのだ。ぼくはといえば、プールに足をつけるこ
ともせず、海で泳ぐのが海だと突っ張って、ホテルが視界に入らな
いように泳いだりしていた。

 さらにところが、である。いくらか歳月を経て帰省したとき、そ
こにはホテルとプールの相変わらずの光景があった。陽が沈む頃、
ホテルを見下ろせる丘の上から夕陽に照らされたホテルとプールと、
そして黄金に輝く海を一望する瞬間があったのだけれど、その時そ
の風景を、ぼくはきれいだと感じてしまった。それこそ、きれいと
感じてしまった、という不覚の実感があった。

 これが80年代のどこかで経験した感覚の折れ曲がりだった。
 浜も海も、ホテルひとつでどうかなってしまうような小さな存在
ではなかった。ホテルやプールを包み込むものとして浜辺や海は存
在している。ホテルやプールを抱くように天然自然があるのだ。人
工的自然があること自体は問題ではない。天然自然に矛盾せず、そ
れに溶け入るように人工的自然があるということ。それが考えるべ
きことなのだ。
 ここまでが、80年代に望見した都市と農村の構図だった。

(超自然哲学29 「5.都市感性・ウェブ感性と身体性」)


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コメント

そうですね。
その後、90年代はどうなるのでしょう。
このことは僕にとっても面白いテーマとしてとらえている。
あのホテルがなくなると、どうなるのかと考えてしまう。
あのホテルの庭を初めて見たとき、人口自然が活かされていると感じた
自然の再生といきがっている自分がおかしいとも思うが、
人間との係わりのなかで天然自然も新化していくのであろう。
2000年時代になって地球は急速に変化している。
再生がきかなく前に考えよう。

投稿: 泡 盛窪 | 2007/02/28 23:45

盛窪さん、コメントありがとうございます。

今後はまさに、盛窪さんがやられようとしていることだと思います。

都市の観点からいえば、
与論「体験」と与論「移住」の間に、
与論「滞在」を作り出すことです。

都市居住者が、一定期間、自然のただなかで暮すこと。

こういう意味では、与論島のほうが、
人工と自然のバランスの中に生きているのかもしれませんね。
いや、きっとそうです。(^^)

投稿: 喜山 | 2007/03/01 09:06

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