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2007/02/12

与論の言葉で話そう

菊秀史さんの『与論の言葉で話そう』が嬉しい。

「話そう」と書名にある通り、
この本には、与論の言葉を自分たちのものにし続けたい
という願いがあります。

 私が本書を出したのは、与論の若者や子ども達に、
 今すぐにも自分の島の言葉を覚えて話して貰いたい、
 そして更に次の世代に継承して欲しいと強く望むからです。

菊さんは、幸い四十代以上は与論の言葉を日常的に使えるから、
話せる世代が継承に力を注げば、
「近い将来きっと復興を果たすことができる」
と語っているのです。

ぼくは四十代のくせに、
与論の言葉を中途半端にしか話せないので、
この本はお手本になってくれます。

なにしろ、語彙の説明もさることながら、
例文がふんだんにあって、
日常的に口にすることができるようにガイドしてくれているのです。

 ガンチガディ
  <そうとまで
  1.どういたしまして
  トートゥガナシ / ガンチガディ。
  有り難うございました。どういたしまして。
  2.「何を言っているんだ」という非難の気持ちを含む言い方。
  太郎: 次郎、ナーウピャー チュラーサ ジーヤ カキ。
      〃 、もう少し   きれいに  字は  書きなさい。
  次郎: ガンチガディ、ドゥーヤ ユクヌ ワシクシュティ。
      何を言っているんだ、自分は なお 悪いくせに。

こんな具合いです。
ぼくは、「どういたしまして」の意味は知っているから、
自分でも使うけれど、「2」は知らなかった。
覚えて使いたいと張り切ります。

そういえば、トートゥの解説もとても嬉しいもの。

 尊(トートゥ)<尊い。感謝の意を表す言葉。
 有り難うございます\ました、の意味。
 普通、後に尊敬の意を表す接尾語「加那志」(「様」「お方」に相当)
 をつけて尊加那志(トートゥガナシ)
 (<有り難いお方。尊いお方。有り難う様)と言います。
 「加那志」は次のようにも用います。
  ウレーガナシ(あなた様) ウヤガナシ(親御)
  ティンガナシ(おてんとう様)
  クヮーガナシ(お子様。ご子息。ご息女)

これは貴重な解説です。

トートゥガナシに「尊々我無」の漢字を当てて、
もしその通りにしか理解しないようになったら、
トートゥガナシに申し訳ないでしょう。

この本は菊千代さんの『与論方言集』とともに、
ぼくの大切なテキストです。

 ♪ ♪ ♪

菊さんには、与論の方言をユンヌフトゥバ(与論の言葉)
として紹介していますが、

与論の方言を覚えよう、
とは言わずに、
与論の言葉を覚えよう、
としています。

この立ち位置には共感します。
ここには、いずれ共通語ももともとは方言という目線があって、
どの言葉にしても方言という下敷きの広がりを感じるからです。


ぼくには、与論の言葉の分析も嬉しい。

  1.オ母音はウ母音に
  2.エ母音はイ母音に
  3.カはハに
  4.ス(ズ)はシ(ジ)に
  5.ツはチに
  6.ハ・ヒ・フはパ・ピ・プに
  7.リはイに
  8.一語の言葉は長音になる
  9.「AU」は「E」に
 10.「AE」は「E:」に
 11.「AO」は「O:」に
 12.「AWA」は「O:」に

たとえば、1、2は、
五母音ではなく三母音が基本であることを示すもので、
代表的なものですが、
それに続く特徴には、
ぼくでは到底、分からないことも多く、
与論の言葉を考える手がかりを教えてもらえるのが
ありがたいところです。

 ♪ ♪ ♪

 本書が参考書として大いに活用されて、以前のような、
 島民の殆どがユンヌフトゥバと共通語を自在に使い分けできた
 言語状況になってほしいと願って止みません。

この願望の新しさは、与論の言葉と共通語の使い分けが
目指されている点です。

かつはこういうわけにいかなかった。
方言は使わず共通語を使おう。
それが、与論島を含め南島近代の標語でした。

与論の言葉が、共通語と同等に、
あるいはそれ以上の価値で浮上してきたのです。

使い分けを目指す。
ある意味でそれは与論島の特権かもしれません。
話せる人の存在が前提になっているのですから。

しかしこの特権は充分に生かして、
与論島を豊かにしたいとぼくも願います。


「ウシがパーパーをおんぶ」と
「アチャー」の笑い話も楽しい。

与論島に行けば、きっとこの本に出会えるでしょう。
ぜひ、手にとってみてください。


与論の言葉で話そう(1)
ユンヌフトゥバではなそう
挨拶・名詞
こそあど言葉
性格・感動詞・副詞』

菊秀史 著
与論民俗村発行

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