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2006/07/23

未来のイチローからの贈り物

「道徳の教科書にも載ったんだよ」と、
子どもが見せてくれたのが、イチローの本でした。

Ichiro_1

イチロー 果てしなき夢―少年の想い遙かに

義田 貴士

学習研究社
2005/04
1,155円 (税込み)

次男は自分でこの本を選んで買いました。
彼は小六の野球少年。1番サードで、守備はしっかり、
攻撃もしっかりミートで足で稼ぐ。
そう、ポジション以外はイチローにタイプが似ています。
彼自身ももちろん、イチローが好きです。

”未来のイチロー”が面白かったというので、
「単行本をよく読めたね」と言いながら、
貸してもらいました。

スポーツジャーナリストの義田貴之の手になるこの本は、
義田が身近に捉えたイチローの姿を伝えてくれます。
少年の日から、
あの、258本の安打数世界新記録の達成まで。

感心させられるエピソードはいくつもありました。
中でも、ぼくが面白かったのは「安打数」こだわりの理由です。

打率よりも安打数にこだわるその理由は、
打率だとヒットを打っても下がることがあるから、と。

 ヒットの数だけは、裏切らない。その試合でノーヒットで
 も、減らないでしょ、ヒットの数は。打てば打っただけ、
 増えていく。ひとつずつ、達成していく。たし算なんです
 よ。だから目の前の『目標』として達成感を得やすい。だ
 から、打率とか首位打者なんかより、僕にとって大切なの
 は安打数、200本安打なんです」

なるほど、と思います。

ぼくたちは、いわば出来あがった社会にいるから、
それこそモノやコトやヒトを評価する指標はごまんとあります。

よかれと思ってつくる指標も、
本質的でなかったり細部に拘泥しすぎていたりして、
指標に振り回されてしまうこともあるほどに。

イチローのこだわりは、
今日び、どの指標を選択するかということもまた、
何事かであることを教えてくれます。

人を活かす自分を活かす社会を活かす指標は何か。
それをみつける作業も大切なのですね。

ところで、どの指標にするかという選択の向こうには、
仕事や生き方でどの道を選ぶかという
もっと大きなテーマも控えています。

イチローは、それについて、
「好きなことは早く見つけたモン勝ちですよ」
と言っています。

その通り、と言うほかないけれど、
ここにはもうひとつ付け加えてもいい。

「好きなことを見つけるのに遅すぎるということはない」と。

ぼくたちのいる社会はどんな風にも生きられるという
自由のイメージをまとっているから、
「好きなこと」は見つけることを求められます。

好きなことを見つけるのも作業だし、見つけるのも力です。
イチローは、少年の頃に「好きなこと」に出会い、
それをとことん追求することができています。
そういう人の弁として説得力があります。

好きなことを見つけること、
そしてそれを追求する上で、
自分を活かす指標を持つこと。

ぼくにはこの二つのことが一番、強く印象に残りました。
求道者、イチローの姿が生き生きと浮かび上がってくるようです。
本の奥付には2006年4月時点で6刷とありますが、
その通り、いい本です。


ところで、ぼくにとってはそれだけに終わりません。
この本は、子どもが初めてぼくに貸してくれた本です。
ぼくは、その気持ちを、イチロー物語から得たもの以上に、
大切に受けとめます。

あたたかなものが身体中をめぐって、
優しい気持ちになれます。

ぼくは、本を買う軍資金を提供したかもしれません。
でも、何かをもらったのはぼくのほう。
彼が心動かされた本を貸してくれて、
彼と同じように心動かれたのですが、
仮にそれがなくても、貸してくれたこと自体に、
ぼくは生きる励ましのようなものをもらうのだから。

ありがとう、奏。

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