ハイビスカスとオランウータン
与論島ではそこかしこにハイビスカスが咲いている。
歩けば当たるというくらい、ハイビスカスは目の端にあった。印象だけで言えば、年から年中、咲いていた。
そしてぼくにとっては、ハイビスカスといえばオランウータンの好物、である。
少年の頃、与論島は観光ブームのただなかにあった。南の最果てというイメージもあった。
そこで、というわけでもないだろうが、
近所のホテルには、オランウータンがいたのだ。
本当である。たしか、テナガザルもいた。
1970年代のはじめの頃。
南の島の演出のためだったのだろうか。
やれやれ、である。
が、子どもには、無料動物園だった。
しかも檻から距離がなく、間近に見れる動物園だ。
学校の帰り、無料動物園に寄るのはちょっとした
楽しみになっていた。
そのとき、歩けば当たるハイビスカスをちぎって
その花を上げたところ、美味しそうにほうばるのだ。
オランウータンは。
嬉しくなって、ハイビスカスをちぎっては手渡していた。
そこで、
ハイビスカス=オランウータンの好物
という図式ができあがった。
ある日のこと、いつものように学校帰りに寄って、
ハイビスカスをあげようとしたら、鞄を奪われた。
なにしろ相当な腕力だ。
一瞬、綱引き体勢になったがあっという間だった。
子どもの手から簡単に奪うと、中を漁りはじめた。
鞄の中には、給食のあまりのコッペパンが入っていたのだが、
それをとってオランウータンは美味しそうに食べたのだ。
しばらくすると、ホテルの人がやってきて、
オランウータンから鞄を取り戻してくれた。
いま思えば、腕を引っ張られずによかったと思うのだが、
かなりな接近遭遇体験だった。
あのオランウータンはその後、どんな運命を辿ったのだろう。
ハイビスカスを見ると、そのことを思い出す。
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コメント
あいつには私も小学校時代釣竿とられて折られました。
よく後ろ向きに小便も飛ばされました^_^;
病気で死んでしまいましたね。
投稿: 茶魔 | 2005/06/26 03:26