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2005/04/28

格さん、助さん、漕ぎなさい

boat


このボートにはタイヤが付いている。タイヤ付きボートだ。親戚のやか(兄上)に借りた。

弧を描くような入り江と堡礁の内側は、遠浅で、おだやかな湖のようだから、ローボートをのんびり漕ぐには持ってこいなのだ。

最近は見かけなくなってしまったので、「どこかにローボートはない?」と聞いたら、
「ぼくのを貸してあげる」と言ってくれたのだ。

このタイヤのおかげで、浜にボートを上げたり、ボートを移動させるのは
すこぶる楽にできる。

問題は乗り込むときと引き上げるときだ。
なにしろ、浅瀬で水圧に抗しながら、タイヤを下に引き抜いたり、
水圧に抗しながらタイヤを海に埋めつつ、
差し込んだりしなければならない。
これは慣れるまでは、難儀だった。


「これ、どうやって漕ぐの?」と聞くと、
やか(兄上)は、ボートの設置所のそこらから、板切れを拾ってきて
「これで」と渡される。

「はあ?」と思ったが、冗談ではなかった。

当然ながら、タイヤ付きボートはローボートを改造したものなので、
ローはないし、ローを置く取っ手もない。
仕方ない、やってみよう、とばかりに、海へ出てみた。

子ども二人を前に座らせて、ぼくは後ろに陣取り、
ご一行様とばかりに、「格さん、助さん、漕ぎなさい」と
声かけして、前に進んでみた。

いつもパソコンのキーボードを打つことの多い、やわな手のひらは
すぐに豆ができるありさまだったが、
これが慣れると面白いように進んだ。

「ローボートよりも進むよ」というやか(兄上)の言葉は
信じていなかったがまんざらでもないと思えてきた。

入り江と堡礁の内側は1キロ四方はある大きさなので、
沖合いへ出て、石灰岩に紐を巻きつけた錨を降ろして、
ボートのまわりを泳いで遊んだ。

「格さん、助さん、出発です」と、場所を変えようと進んでいると、
グラスボートが近くを通過していく。そして、不思議そうな顔で、
「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。

堡礁から来てみれば、ボートに板切れ三枚でボートを漕いでいる
親子に出くわして、漂流の体に見えたのかもしれない。

「大丈夫です」とニッコリ笑って見せて、手を休めたりした。
このボートのおかげで、去年の夏は、ふばまの海を満喫できた。
今年は借りられるかなぁ?


祖母は、百五歳の誕生日から三日を生きている。

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