生活者視点で会話する

 昨年、四家さんに「カンバセーショナル・マーケティング」という概念を教えてもらったが、その際、マーケターが消費者のコメントに反応しないことが課題として挙げられていた。つまり、消費者とマーケターの会話が生まれていない、と。

 そんな問題意識からいうと、「青雲アモーレ・フォトアルバム」は、会話を生んでいる例だと思う。

 このブログサイトを見ると、消費者のフォトアルバムの投稿を募っているが、事務局の小野さんは、ひとつひとつの投稿に、しっかりコメントを返している。しかもそれだけでんはなく、よく見ると、コメントやトラックバックをしている消費者のブログサイトにもコメントを返したりしている。これはなかなかできないことではなだろうか。

 まず、主催しているフォトアルバムの投稿サイトにコメントを返すこと。これが、冒頭のカンバセーショナル・マーケティングの課題として語られていたことだけれど、ここは難なくクリアされているようにみえる。

 というのも、投稿へのコメントだけではなく、小野さんは消費者ブログでコメントを投稿してもいるからだ。コメントやトラックバックつながりで辿った消費者のブログへのコメント投稿は、消費者に嫌がれるのではないだろうかという懸念を含めて、心理的なハードルもあることだ。けれど、見ている限り、これも無理なくクリアしているように見える。

 この2つの会話が成り立つためには、

1.投稿に対するコメントが、「コメントありがとうございます。」という挨拶だけでなく、投稿画像に対する感想を自分の言葉で丁寧に書いていること。

2.投稿だけでなく、消費者ブログに対しても、マーケターとしてではなく生活者視点でコメントしていること。

 この2つがポイントになっているように思える。


 こうした会話で何を実現しようとしているのかといえば、わたしは信頼関係だと思う。信頼関係はコミュニケーションのベースになるものだからだ。企業が担当者に要素分解されて、生活者視点の担当者が消費者と会話することで、いままでにない関係が作られていくさまを、ここに見ることができる。

 ぼくは、マーケターと消費者の関係は、「囲い込み」から「飛び込み」へ移行すると考えているけれど、では「飛び込み」とは何なのか、というとき、その具体的な姿が現れてきたように思うのだ。



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カンバセーショナル・マーケティング

 カンバセーショナル・マーケティングというトレンドを、四家さんに教えてもらいました。


 ◎Eメールの「生の声」からカンバセーショナルマーケティングへ
 ~激変するオンラインマーケティングの未来~ (前編) MarkeZine

 ◎Eメールの「生の声」からカンバセーショナルマーケティングへ
 ~激変するオンラインマーケティングの未来~ (後編) MarkeZine

 対談のなかでも、カンバセーショナル・マーケティングをガイドしてくれるブログを紹介してもらっています。

 「カンバセーショナル(会話)マーケティング」のアーキテクチャとコスト

 これを読むと、自分メディアであるブログを消費者が手にしたことで、膨大な量の消費者の発信が生まれるようになった。しかし、いままでのところ、ブログ・マーケティングとは、その消費者の声に応えようとするよりは、クチコミに値する消費者の声を人為的に作ることに専念してきたようにみえる。そうではなく、もっと企業のマーケターは、会話すべきではないのか。カンバセーショナル・マーケティングは、こうした背景があって生まれてきたように見えます。そうだとしたらとても真っ当な流れです。

 ところで、「対話(ダイアローグ)」ではなく、「会話(カンバセーション)」なのはなぜか。ぼくは知見を持たないので、直感で言うしかないのだけれど、ブログはおしゃべりするように書くことでコミュニケーションを生むから、対話というより、会話というのが当たっている。「対話」は、<一対一>のコミュニケーションのようにニュアンスされるけれど、「会話」は、<一対一>から<多対多>までのニュアンスを包含している。「会話」と呼ぶのは、その自然発生的なひろがりや話題のひろがりを生かそうとしているからだ。そんな印象を受けます。

 四家さんの「話し言葉」が大事という発言も、「会話」という背景を置くと、受け止めやすくなります。


 それにしても、四家さんの気配りと見識が嬉しい対談でした。ありがとうございます。



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「囲い込み」から「飛び込み」へ

ダイアログ・マーケティングにおける「商品」を成り立たせるのに
必要なマーケターのアクションは、
「囲い込み」ではなく「飛び込み」である。

Photo_63











消費者を商品によって囲い込むのではなく、
マーケターが消費者の声に飛び込むのである。
「囲い込み」は、消費者をターゲットにすることで
成立した考え方であるとすれば、
「飛び込み」は、マーケターが消費者の声(文脈)に
囲い込まれることで実現する。

消費者の声が直接、見えるウェブコミであれ、
消費者の声が直接、聞こえる店頭であれ、
現場で消費者の声に触れ、
対話に臨むマーケターの運動が
ダイアログ・マーケティングを実現するのである。

ダイアログ・マーケティングでは、
消費者にアプローチするコミュニケーション・チャネル
を設計するのではなく、
まず消費者のコミュニケーション・チャネルの実態を描き、
その個々のチャネルのどこで接点を持てるかを考えることが大切になる。

消費者の声が聞こえるあらゆる接点にマーケターが飛び込み、
そこで対話を続ける必要があるのだ。


「ダイアログ・マーケティング仮説 9」

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「AIDA」から「SEAP」へ

ダイアログ・マーケティングにおける消費者行動は、
従来のモデルやその修正版では説明が困難であり、
新しいモデルを提案したい。SEAPと略称する。

 S(Search) 検索
 E(Estimate) 評価
 A(Action) 購買行動
 P(Post) 投稿

従来モデルの原型であるAIDAは、
注目を引き、関心を持たせ、欲求を喚起し、行為を引き起こす、
というように、マーケターが消費者を操作可能な対象
と見なすことにより成立している。

ダイアログ・マーケティングでは、主役は消費者である。
主役の場となるウェブコミにおける消費者行動に注目すると、
マスメディアによる認知を起点としない
消費者行動を観察することができる。

まず、「検索」し、ブログや評価サイトで
商品の認知や理解を通じて「評価」し、
「購買行動」を起こす。そして購買後に、
商品感想をブログや掲示板に「投稿」しクチコミの素材を提供する。

こうした「検索」起点の消費者行動を
その頭文字をとって、SEAPと名付ける。

SEAPは、ウェブコミを介して発信主体となった
消費者の行動に着目してモデル化しているので、
消費者一般に当てはまらないように見えるかもしれない。

しかし、「検索」や「投稿」を「人に聞く」、
「人に伝える」と置き換えれば、
それは従来からふつうに見られる消費者行動であり、
実は全く新しい行動型というわけではない。

インターネットが主体的な消費者行動の場を用意し可視化したので、
そこにモデル化の契機が生まれたのである。
そこで、SEAPはウェブコミ内に限定せずに普遍化できると考える。


「ダイアログ・マーケティング仮説 8」

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商品と商品への声

ダイアログ・マーケティングの「商品」概念は、
商品それ自体と商品に対する声(VTP,voice to products)
で表現される。

商品への声は、
消費者の声(VOC,voice of consumer)だけでなく、
マーケターの声(VOM,voice of marketer)もあると考える。

これを元に、
ダイアログ・マーケティングにおける商品をPdとおけば、
Pdは以下の式で表される。

 Pd=P+VTP=P+(VOC+VOM)

ダイアログ・マーケティングにおいては、
マーケターと消費者の対話による「声」も
商品を構成する要素と考えるのである。

VTPは、発信主体と返信主体の別によって、
3つのタイプに分けられる。

1)マーケターの発信の声と消費者の返信の声
2)消費者の発信の声(問い合せ)とマーケターの返信(回答)の声
3)消費者の発信の声と消費者の返信の声

声をV、マーケターの声をVm、
消費者の声をVcとすれば、
ぞれぞれは以下の式で表される。

1)V1=Vmo+Vcr
2)V2=Vco+Vmr
3)V3=Vco+Vcr

V=V1+V2+V3

Photo_62











次に、ダイアログ・マーケティングは、
商品に商品への声を豊かにつけることを「商品育成」と考える。
パートナーのリテラシーで見たように商品育成につながる声とは、
否定的意見(negative opinion)ではなく、
肯定的事実(positive fact)、つまり商品のほめ言葉である。

商品育成は、プロダクト・ライフサイクル(PLC)に沿って考えることができる。
商品の導入期は、マーケターが商品について
自分の言葉(Vmo)で語ることが重要である。
またその際、消費者に評価を聞き、
返信(Vcr)を受け取ることが商品への声を豊かにする。

成長期では、マーケターのメッセージに対する
消費者の評価(Vcr)が起点になり、
それに触発されるように、
消費者自身の自発的な声(Vco)が起きることが望ましい。
消費者発のブログがクチコミの起点になるのはその例である。

成熟期では、消費者自身の自発的な声(Vco)が起点になり、
別の消費者の返信(Vcr)を呼び、
顧客間インタラクション9)が発生することが望ましい。
顧客間インタラクションは商品の理解を生むだけではなく、
使いこなしを促進し新しいベネフィットを創造するからである。

また、導入期以降のライフサイクルを通じて、
消費者の問い合わせ(Vco)とそれに対するマーケターの回答(Vmr)は、
対話を成立させる信頼関係を培うものとして重要である。

(Vco+Vmr)は、
ニュートラルからネガティブなモードで受信する消費者の声を、
ポジティブなモードに変換するNP変換コミュニケーションである。


「ダイアログ・マーケティング仮説 7」

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「理解」指標としてのインタラクション

「対話」の成果は理解である。(※6)

マーケターによる消費者理解と消費者による商品理解である。
ここで、消費者による商品理解の指標として、
マーケターと消費者のインタラクション数を提案したい。

インタラクション数は、
(発信)と(返信)の総和として表現することができる。
まずインタラクション数は、
発信と返信主体の区別によって3つのタイプに分けられる。

1)マーケターの発信と消費者の返信
2)消費者の発信(問い合せ)とマーケターの返信(回答)
3)消費者の発信と消費者の返信

ウェブコミの中で位置づければ、
1)は「プロモーション」、「リサーチ」、
2)は、「インバウンド」、
3)は「コミュニティ」の領域で表される。

ここで、インタラクション数をI、発信をO、返信をRとすれば、

 1)I1=O1m+R1c
 2)I2=O2c+R2m
 3)I3=O3c+R3c

1)2)3)の総和としてのインタラクション数を、
「理解」の指標とする。

I=O+R=I1+I2+I3=(O1m+R1c)+(O2c+R2m)+(O3c+R3c)

インタラクション数(I)は、
それぞれの発信数と返信数を調べることにより、
計測可能であると考える。

たとえば、マーケターが消費者にeメールで10000通、
商品紹介のプロモーションメールを発信した場合を考える。
このとき、マーケターAのメールは返信率0%で、
マーケターBのメールは返信率10%であったとする。

このとき、インタラクション数Iは、

 A Ia=10000+0=10000
 B Ib=10000+1000=11000

となり、「理解」指標としてのインタラクション数は、
Bが高くなる。
この場合、Bのほうが消費者の商品理解が深いと判断するのである。

またブログのインタラクション数は、起点となる記事のページに対する
コメントとトラックバックを辿ることによってカウントできる。
ある記事についたコメント、トラックバックの数をC、TBとすれば、
インタラクション数Iは以下のように表される。

 I1=1+C1+TB1

次に、トラックバックによってつながった
別の記事も同じ商品をテーマにしていると仮定すると、
そこについたコメント、トラックバックを
インタラクションが可視化されたものとしてカウントすることができる。

 I=I1+I2=1+C1+TB1+C2+TB2

同様に、ある商品評価の記事を起点に広がるブログ記事の
インタラクション数は、n次の階層まで辿ると、
以下のように表される。(※7)

 I=I1+I2+・・・+In
 =1+(C1+C2+・・・+Cn)+(TB1+TB2+・・・+TBn)
 =1+ΣC+ΣTB

ある食品についての商品評価記事Aの5次までの
コメント、トラックバックの数をカウントしてみると次のようになった。

 Ca=230、TBa=118、Ia=449(5次までの記事数15)
 (特定保健用食品、飲料。2005年6月~9月実施)

この場合、記事Aを起点にしたインタラクション数は、
449と表される。(※8)

※6.犬田充は『マーケティング戦略のための
消費者行動のとらえ方』(1986)で、
第二次大戦中のアメリカの実験を紹介している。
心理学者K・レヴィンは、食糧問題解決のために
牛の内臓を食べさせるにはどうしたらよかという課題に直面し、
実験を行なう。

まず、13~17人の主婦で構成する3集団を2つ作る。
そして一方の3集団には、
贓物を食べようという講演を聞いてもらい、
もう一方の3集団は、
贓物の「料理のしかた、におい、夫の態度といった、
贓物消費の障害となるものについてお互いに討論させ、
ついで、専門家にそのような障害を」取り除く助言をしてもらった。

すると結果は驚くべきことに、臓物を食べた被験者は、
前者が3%、後者が32%と10倍以上の差を生んだ。
ディスカッションが理解と受容を生んだ例である。

※7.「6次の隔たり」に言う、
「6人の知人(の知人)を介していけば全ての人とつながることができる」
という仮説を援用すれば、6次まで辿るというアイデアもある。

※8.メトカーフの法則(Metcalfe's Law)は、
「ネットワークの価値は
そのネットワークに接続する人数の2乗に比例する」
と表現される。

ネットワークに接続する人がn人とすると、
n人の相互に双方向のベクトルを引けば、
その数は、n(n-1)となる。

nが充分大きい時、n(n-1)≒n2 となる。
そこで、メトカーフの法則を「ネットワークの価値は
ネットワークのコミュニケーション量に比例する」と捉えてみると、
n2 を目印に、数値を指数化してみることもできる。

例に挙げたトラックバック数で指数化してみると、
トラックバック数118は、15の記事から生まれているから、
118/152=52%となる。

「ダイアログ・マーケティング仮説 6」

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聞くコミュニケーションによる関係維持

ダイアログ・マーケティングは、ウェブコミにより
4つのコミュニケーションを行ってきた。

1)プロモーション 「話す」コミュニケーション
2)リサーチ 「聞く」コミュニケーション
3)インバウンド(問い合わせ対応) 「答える」コミュニケーション
4)コミュニティ 「しゃべってもらう」コミュニケーション

ダイアログ・マーケティングにおける対話は
この4つのコミュニケーションを設計することで実現できる。

プロモーションは、メンバーを対象に行なわれる。
メールマガジン、HTMLメールマガジンやRSSが代表的である。
リサーチは、モニターを対象に行なわれる。
Webアンケートやメールアンケートが一般的だ。

インバウンド(問い合わせ対応)は、
eメールで行なわれるのが通常だが、
FAQなどでインタラクション数を減らす努力も行なわれている。

コミュニティは、BBS(掲示板)やメーリングリストで行なわれてきた。

ここで重要なのは、過去10年間の推移が教えるところによれば、
メールマガジンやバナーのクリック率やプロモーションの
レスポンス率は低減するが、
アンケートなどのリサーチのレスポンス率は一定を保つことである。

Pr_1











このことは、プロモーションやリサーチを
マーケティング手法としてではなく、
コミュニケーションとして捉えると理解しやすい。

プロモーションは、マーケターが話し続ける対話である。
厳密に言えば、それはモノローグである限り、ダイアログではない。
対してリサーチは、マーケターが聞き、消費者が話す対話である。

対話は双方が、話し聞くことで成立する。
だから、モノローグになりやすいプロモーションはレスポンスが持続せず、
ダイアログの形を採るリサーチは、レスポンスが持続するのである。

ダイアログ・マーケティングは、消費者に「聞く」実践が不可欠なのだ。

ところで、ダイアログ・マーケティング実践の過去10年間を振り返ると、
4つのコミュニケーションのうち、
コミュニティだけは、実践するマーケターと
二の足を踏むマーケターとに二分されてきた。

理由は、コミュニティは
消費者に「しゃべってもらう」コミュニケーションであり、
マーケターにとってコミュニケーションがコントロール不可能だからだ。
言い換えれば、コミュニケーションをコントロールできないから、
コミュニティはやらないと判断されてきたのである。

そこへブログが登場したのだが、
ブログは4つのコミュニケーションの中でいえば、
消費者同士の対話を促進するからコミュニティに属している。
ブログはこれまでのコミュニティの道具と異なり、
着手するマーケターが増えてきた。

それは、ブログによるコミュニティのリスクが
今までより低く見えているためだ。
そして、ブログは個人ホームページだから
自分のページの記事にネガティブなことはなかなか書かないという点が、
コミュニティの荒れを少なくする根拠に挙げられている。

ところでドゥ・ハウスではウェブコミを活用している
企業のWebサイトの興味深い事例にも立ち会っている。
消費者とのコミュニケーションを重視したWebサイトには、
BBSのコミュニティがあり、
登録メンバーはそこでコミュニケーションをしていた。

ところで昨年の12月、BBSに加えて、
新たに無料で開設できるブログを登録メンバーに提供したところ、
BBSで定期的に起こっていたメンバー間の諍いが止んだのである。

現在、半年以上経過しても同じ状況が続いている。
そこで、ブログがコミュニティの荒れを生みにくい要因として
もうひとつの仮説を提示したい。

それは、ブログの記事は、
書き手のプロフィールや記事の背景が見えるから、
行動だけ記されたBBSに比べて納得感を得やすい、ということだ。
それが、ブログは自分の記事を書く場合でも、
他人のブログにコメントしたりトラックバックしたりする場合でも、
ネガティブになりにくい要因であると思われる。

ただし、ブログにおいてもコミュニケーションが
最終的にはコントロールできないことに変わりはない。
マーケターはコントロールを諦めて、対話に入る必要があるのだ。


「ダイアログ・マーケティング仮説 5」

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ウェブコミの自立

インターネットの対話空間をコミュニケーション・チャネルとしてみれば、
マスコミ、クチコミに対してウェブコミと位置づけることができる。(※5)

Photo_60












ウェブコミの独自性は、マスコミとクチコミの機能を併せ持つことである。

 マスコミ 不特定多数への発信で認知を高める、空間の技術
 クチコミ 特定少数間の発信と返信の繰り返しで理解を深める、
      時間の技術

ウェブコミは、この両方の機能を持っている。
たとえば、ブログは、コメントやトラックバックによって
商品理解を深めクチコミを促進する一方、
閲覧されることによって発信も行なっている。

ウェブコミの発信がマスコミと異なるのは、
能動的に見られることによってのみ発信力を発揮できる点だ。

マスコミとクチコミは原理的にはそれぞれが独立した技術だから、
コミュニケーション・チャネルの各メディアは、
クチコミとマスコミを軸にした空間上に位置づけることができる。

たとえば、TVは現在最もマスコミ度が高いが、
クチコミ度は最も低いメディアである。
対面のクチコミは、クチコミ度は最も高くマスコミ度は最も低い。
そして個人ブログのクチコミ度は、
実際のクチコミには及ばないけれど、
クチコミ以上のマスコミ度は持っている。

また、マスコミは「不特定多数」を対象とするのに対し、
クチコミは「特定少数」の間でやりとりされる。
これに対してウェブコミは、
「特定中数」間の消費者とのやりとりを可能にする。
マスコミは不特定多数への一方的発信であり、
クチコミは特定少数間の双方向コミュニケーションだから、
同様の表現をすれば、
ウェブコミは特定中数との双方向コミュニケーションと
その結果としての発信を行うチャネルであると言うことができる。

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ウェブコミというコミュニケーション・チャネルが生まれたことで
ダイアログ・マーケティングの「対話」空間が生まれたのである。
そして最も重要なのは、消費者がメディアを持ったこと、
もっと言えば、消費者自身がメディアになったことである。

2006年、自社のWebサイトの登録メンバーにブログを
開放したメーカーのマーケターは、ブログの記事を見て、
「もう自分たちがコンテンツを作るべきではないんですね」と漏らした。

企業がWebサイトのコンテンツ用に作成する商品説明も、
消費者が書くブログ記事のリアリティや信憑性には
及ばないことを実感しての声だ。

消費者がメディアを持ち、消費者がメディアになったのである。


「ダイアログ・マーケティング仮説 4」

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パートナーの時代へ

ダイアログ・マーケティングにおける
マーケターと消費者の関係は協働である。

この協働をM&Cコラボレーションと呼べば、
M&Cコラボレーションを実現するマーケターと消費者の協働には
4つの段階がある。これもインターネットが可視化してくれたものだ。

 【段階別の消費者】 【協働の内容】
1.アクティブ・ネットユーザー 商品のことを「話してくれる」
2.メンバー 商品のことを「聞いてくれる」
3.モニター 聞きたいことに「答えてくれる」
4.パートナー 商品のことを「考えてくれる」

「アクティブ・ネットユーザー」は、
インターネットを積極的に利用している人。
自分のブログやホームページを持って情報発信をしている人が典型。
商品のことを「話してくれる」存在である。

「メンバー」は、企業が運営するWebサイトに登録している人。
メールマガジンの読者が典型である。
商品のことを「聞いてくれる」存在。

「モニター」は、企業が運営するWebサイトに登録して、
アンケートなどの企画に積極的に参加する人。
アンケート・モニターが典型。
聞きたいことに「答えてくれる」存在である。

最後の「パートナー」は、商品やサービスの
よさを理解してリアルに表現できる人である。
商品のことを「考えてくれる」のだ。

ブログ以前の10年間で、アクティブ・ネットユーザーのメンバー化、
メンバーのモニター化へと、
ダイアログ・マーケティングの「対話」は進展してきた。

現在、一番の課題はモニターのパートナー化である。
モニターとパートナーの違いは、パートナーが
マーケティングに意味のある質の声を表現できる点にある。
モニターは、マーケターが聞けば答えるという点で
マーケティングに参加している。

ただし、質は問われず、
声は「ネガティブな意見」(negative opinion)になりやすい。
これに対してパートナーは、
消費者の声として大切なのが「意見(opinion)」ではなく
「事実(fact)」であることを理解している。

商品に対する意見を物申すのではなく、
商品に関する評価の事実をありありと述べることにより、
マーケターの仮説発想を助けるのである。

もうひとつは、「ネガティブ」な事実と「ポジティブ」な事実の
役割が違うことを理解している点である。
ネガティブな事実は「改善情報」であるのに対して、
ポジティブな事実は「機会発見情報」である。

モニターは、ネガティブな意見を口にしやすいのに対して、
パートナーはポジティブな事実を言ってくれる。
これによって、マーケターは商品改善のポイントを知るだけでなく、
商品成長のための機会を発見することができるのである。

 【パートナーのリテラシー】
1)「意見」ではなく「事実」を豊かに表現することができる。
2)「ネガティブ」な評価以上に、「ポジティブ」な評価を表現することができる。

ダイアログ・マーケティングでは、
消費者にもこうしたリテラシーが必要になる。
したがって、モニターからパートナーへの育成も必要である。

また、ブログの登場で脚光を浴びるのが、
アクティブ・ネットユーザーである。
ブログ以前では、登録しなければ対話に入ることはできなかったが、
コメントやトラックバックによって、登録の有無に関わらず、
マーケターと消費者は対話できるようになった。

アクティブ・ネットユーザーがブログによって
対話できるようになったことで、
マーケターと消費者の対話空間は
オープンかつフラットになったのである。

これまでダイアログ・マーケティングの努力は、
アクティブ・ネットユーザーをメンバーにし、
メンバーの中でもアクティブな層をモニターに誘導してきた。
また、モニターの中でも質の高い声を提供する層を
パートナーとして育成する活動も一部で生まれていた。
ただ、これらは全てメンバーの規模によって
歩留まりが決まっていると見なされてきたものだ。

ところが、ブログによりアクティブ・ネットユーザーとも
直接つながることができるようになって、
アクティブ・ネットユーザーから直接、
パートナーを育成するテーマも浮上してきた。

彼らがパートナーとして質の高い声を生むようになれば、
ダイアログ・マーケティングの大きな助けになるからである。

「ダイアログ・マーケティング仮説 3」

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「対話」の作法

マーケターと消費者の「対話」を実現したのはインターネットである。

ダイアログ・マーケティングにおける「対話」の基本作法は
この10年間で確立されている。

1996年、ある飲料メーカーのマーケターが
「○○株式会社は喋らないけれど、私は喋りますね」
と発言したことがあった。

この認識は対話の作法に先鞭をつけたものであり、
以後それはeメールマーケティングの領域で確立されてきた。

大事なポイントは、消費者との対話においては、
企業名で対話するのではなくマーケター個人として対話するということだ。
「こんにちは。株式会社ドゥ・ハウスの喜山です」というように、
個人で登場するのである。

それによって、プロモーションやアンケートの返信率は上がったのだ。
この対話作法のポイントは「自己開示」であり、
それはそのまま現在のブログ・マーケティングに生かされている。

主要な作法を列記しよう。

 1)個人名で登場すること。
 2)話し言葉のエッセンスを入れること。
 3)商品についての企業メッセージを自分の言葉で語ること。
 4)消費者に商品評価を聞くこと。

この作法で臨んだ場合、ただ返信率が上がるというだけではなく、
消費者の返信内容にも特徴がみられる。
それは企業に物申すように口を開くというより、
商品づくりに参加するパートナーとして
一緒に考えるような語り口になることだ。

つまり、マーケターはビジネスマンとしてのみではなく、
半分、消費者個人としての顔を出すことによって対話を成立させている。
同じく消費者は、消費者というだけではなく、
ビジネス的な側面を持つことで対話を成立させているのだ。

このとき、消費者とマーケターの関係は、
モノローグ(monologue)垂直的な関係から、
マーケターと消費者の相互変化を伴った
ダイアログ(dialogue)を行う水平的な関係に移行している。

Photo_59













「ダイアログ・マーケティング仮説 2」

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