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「させていただきます」考

 「敬語の指針」での、「させていただきます」に関する解説。

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【解説1】「(お・ご)……(さ)せていただく」といった敬語の形式は,基本的には,自分側が行うことを,ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。したがって,ア),イ)の条件をどの程度満たすかによって,「発表させていただく」など,「…(さ)せていただく」を用いた表現には,適切な場合と,余り適切だとは言えない場合とがある。

【解説2】次の①~⑤の例では,適切だと感じられる程度(許容度)が異なる。
①相手が所有している本をコピーするため,許可を求めるときの表現
「コピーを取らせていただけますか。」
②研究発表会などにおける冒頭の表現
「それでは,発表させていただきます。」
③店の休業を張り紙などで告知するときの表現
「本日,休業させていただきます。」
④結婚式における祝辞の表現
「私は,新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です。」
⑤自己紹介の表現
「私は,○○高校を卒業させていただきました。」

上記の例①の場合は,ア),イ)の条件を満たしていると考えられるため,基本的な用法に合致していると判断できる。

②の例も同様だが,ア)の条件がない場合には,やや冗長な言い方になるため,「発表いたします。」の方が簡潔に感じられるようである。

③の例は,条件を満たしていると判断すれば適切だが,②と同様に,ア)の条件がない場合には「休業いたします。」の方が良いと言えるだろう。

④の例は,ア)とイ)の両方の条件を満たしていないと感じる場合には,不適切だと判断される。⑤の例も,同様である。ただし,④については,結婚式が新郎や新婦を最大限に立てるべき場面であることを考え合わせれば許容されるという考え方もあり得る。

⑤については,「私は,卒業するのが困難だったところ,先生方の格別な御配慮によって何とか卒業させていただきました。ありがとうございました。」などという文脈であれば,必ずしも不適切だとは言えなくなる。

なお,ア),イ)の条件を実際には満たしていなくても,満たしているかのように見立てて使う用法があり,それが「…(さ)せていただく」の使用域を広げている。上記の②~⑤についても,このような用法の具体例としてとらえることもできる。その見立てをどの程度自然なものとして受け入れるかということが,その個人にとっての「…(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられる。
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ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,
イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある

 敬語表現「させていただきます」は、この二つに基準でチェックすればいいように見える。

 しかし、「今日、会社を休まさせていただきます」という表現は、2つの基準ではうまくチェックできない気がする。「会社を休ませていただく」のも、相手(上司、会社)の許可を受けて行い、そのことで休むという恩恵?を受けるように見える。

 「今日、会社を休まさせていただきます」は、「失礼を超えて、無礼な表現」と、小池清治は書いている。「休ませて」は、使役表現である。使役主は、この場合、上司に当たるが、「休ませる」と使役したはずがない。これは、殴っておいて、次に、尊敬しています、と言っているようなものだ、と。激しい叱責である。

 ところで、使役表現が見掛けだけのものではなく、実質的使役表現である場合、「(さ)せていただきます」という表現は適切なものとなります。
 「喜んで、私がやらせていただきます。」「遠慮なく、出場させていただきます。」
 これらは敬語表現上、なんの問題もありません。
 断り無しの使役表現の無礼さに気づけば乱用は避けられることでしょう。(『みんなの日本語事典―言葉の疑問・不思議に答える』

 これを見ると、「今日、会社を休まさせていただきます」も、「断りなしの使役表現」になっているのが違和感のもとになっていると思う。

 ところで、「敬語の指針」では、使役表現という言葉を使わずに説明しているのは、上の例のように、使役表現以外で使われることが多くなっている現状を受けてのことだと思われる。



 もしくは、「今日、会社を休まさせていただきます」は、

ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,
イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある

 ア)の、許可を受けているわけでもないのに、「休む」ことが前提になっており、「断り無しの使役表現」になっているのが問題であると理解すればいいだろうか。


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