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ブログとは「会話」である

ダン・ギルモアの『ブログ 世界を変える個人メディア』は、
ブログを「会話」だと喝破している。もっと正確には、イン
ターネットが「会話」であり、個人のブログがその一部を先
端的に担っていると言っている。

Wetheblog ブログ 世界を変える個人メディア

ダン・ギルモア(著)、平 和博(翻訳)

朝日新聞社
2005/08/05
2,205円


ブログが「会話」だというとき、eメールのことが思い出さ
れる。9年前、eメールをマーケティングに使おうとした時、
ぼくたちは、eメールは「電子DM」ではなく「電子接客」
であると主張してきた。

DMの延長でeメールを捉えてしまったら、インターネット
の世界までDMだらけになってしまう。そうではなくeメー
ルは企業にとって接客、つまり消費者とのコミュニケーショ
ンに他なならないと考えたのだ。

ダンの本が明らかにしているのは、eメールに加えてブログ
がコミュニケーションの道具として広がったことである。e
メールもブログもコミュニケーションの道具なのだ。

         ♪   ♪   ♪

ダンは「迷惑メールの厄災は、メールによるニュースレター
をほとんど不可能にしてしまった」としてRSSによる代替
を書いている。ここはかの地のスパムメールの凄まじさを背
景にしているだろう。

ぼくたちの環境でも確かにそう言える面がある。心少ない電
子DMが増え、やがて心ない電子DM=スパムメールも大量
に届くようになっているから。

けれどもダンのニュースレターvsDM談義がいささか図式
的に過ぎると思える現実感もある。ぼくたちの環境ではメー
ルマガジンはコミュニケーションの道具として有効に機能し
ているし、RSSの使いこなしはもう少し観察が必要だ。

現段階では、RSSとメールマガジンで情報配信、eメール
でしっかりコミュニケーションと位置づけておけばいいと思
える。

とはいえ、ブログとは「会話」であるという視点から得られ
る展望はとても刺激的だ。

ダンは、「ブログは、ウェブ上で手軽に、少なくともこれま
でよりは手軽に、発信することができる初めてのツールだ」
と位置づけて、ウェブや既存のコミュニケーション道具との
区別を丁寧に説明してくれている。

たとえば、ウェブとの違いなら、「ウェブがコンテンツの倉
庫なら、ブログの世界は『会話』だ。」というように、本質
に届く鮮やかな仮説に出会うことができる。

インターネットは消費者が主役の空間だから、「手軽」に発
信できるということは何よりも大事なポイントだ。これまで、
最も手軽な発信手段はeメールだったけれど、それはウェブ
上では表現の場を持たない。ブログは、コミュニケーション
の要素を持ちながら、ウェブ上に表現の場を持つことができ
るのだ。だから、ダンはブログを「われわれのメディア」と
して、ジャーナリズムとしての意味を取り上げていくのだ。

ところで、ダンは広報やマーケティングについても触れてい
るから、その言及に触れてみよう。ダンの主張はとても刺激
的で面白い。

ダンは10の提言を挙げているのだけれど、それぞれの第一
文だけ挙げてみよう。

  1.真剣に耳を傾けよ。
  2.活動内容とその目的について、オープンに語れ。
  3.分からないことは聞け。
  4.できる限りの幅広い受け手に向けて、最も効果的な
    方法で情報を発信せよ。
  5.より多く(より少なく、ではない)の情報提供を心
    がけよ。

  6.組織の人間の公的な発言内容を投稿もしくはリンク
    せよ。
  7.あなたの組織に本気で関心をもっている人々へ、正
    確に照準を定めよ。
  8.間違いは迅速、誠実に訂正せよ。
  9.新しいことを教えてくれた人たちには感謝せよ。 
 10.常に実験を繰り返せ。

ブログが後押しして明快な主張を受け取るのだが、これだけ
では抽象的でもっともなことを言われているように見えるか
もしれない。でもたとえば、3は、以下にこのように続く。

  3.分からないことは聞け。喜んで答えてくれる人たち
    がいるはずだ。十分に耳を傾け、語った後には、次
    のステップだ。ブログのコメント受付機能をオンに
    し、顧客が直接、投稿できるようにせよ。さまざま
    な「有権者」あたちに助けを求めよ。ニュースグルー
    プを開設せよ。だが、決してそれらを検閲してはな
    らない。名誉毀損、わいせつ、全く的外れな投稿を
    削除する以外には。

これを見れば、ダンがごもっともな正論を言っているのでは
なく、かなりラディカルな主張をしているのが分かるだろう。
現在のPR目的のブログサイトは、トラックバックを受け付
け、コメントを敬して遠ざけるのが常道になっているのだ。

         ♪   ♪   ♪

ただ、ダンの主張はラディカルとはいえ、至極まっとうだ。
それは、インターネットはマスメディアと異なり、消費者が
主役の空間だ。だからダンが、「ごく少数の例外を除けば、
ネットワーク化された世界では、企業の透明度の高さがその
まま成功につながる、と私は思っている」と言うのは正鵠を
射ていると思える。

ぼくたちは、『ウェブコミ!』で、このことを「囲い込みか
ら飛び込みへ」と表現した。「飛び込みと言っても飛び込み
営業のことではありません」と親切に解説したレビューもあ
るけれどその通りで、飛び込む先は、消費者の声、もっとい
えば文脈(コンテクスト)だ。

商品が過剰で消費者自身もマーケティングを行なうようにな
っている現在、消費者を「囲い込む」のは不可能で、ベター
なアクションは消費者の文脈(コンテクスト)に寄り添うこ
とだと思える。そのためには、消費者の声に「飛び込む」の
が近道だ。

ダン・ギルモアの『ブログ 世界を変える個人メディア』は、
消費者の文脈・声に飛び込む方法について、ブログを介して
具体的に行なう方法を書いていると言ってもいい。

         ♪   ♪   ♪

ブログとは「会話」であるという命題の援用として、ダンは
いくつかの法則を挙げているけれど、そのひとつにメトカー
フ(Metcalfe)の法則がある。

「メトカーフの法則とは、通信ネットワークの価値は、ノー
ド(結節点)、すなわち接続している端末の数の二乗に比例
する」というものだ。

感覚的に言えばこうなる。ネットワークを構成するメンバー
数が10人だとすると、そのネットワークの価値は10の二
乗、つまり100に比例するということ。で、この100は、
ネットワークの10人が自分以外の9人全員と一往復ずつ声
をかけあった数にほぼ等しい。

そこで、ネットワークの価値はそのネットワークのメンバー
相互のおしゃべりの数に比例するとアナロジーすることがで
きる。そしてこうアナロジーすることで、ネットワークの価
値は、コミュニケーション量に比例するということが展望し
やすくなる。

ただ、これまでのコミュニケーション道具は、メトカーフの
法則を云々するには、掲示板にしても、eメール、メーリン
グリストにしてもコミュニケーション量(インタラクション
数)が貧困にならざるをえなかった。

ブログの登場は、そのメカトーフの法則にとっても意味を持
っている。というのもトラックバックとコメントをコミュニ
ケーションの単位と見なすと、nの2乗に対して比肩できる
数を見せ始めているからだ。

ぼくたちは、何かが始まるし始まっているという実感が湧い
て、少し胸を躍らせるのだ。

ダンは、「さあ、会話を始めよう、みんなのために」と、こ
の本のイントロダクションを結ぶ。これはウェブ日記の、公
開される自分を確認するという微妙な位相に向けて届く、ア
ジテーションになっている。

新しい何かが始まるとき、事態の本質を伝えてくれる言葉は
わくわくする。これはそんな本のひとつだ。

(cf. Dan Gillmor's blog

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