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罪つくりなコトラー

10notaizaiマーケティング10の大罪

フィリップ・コトラー
恩蔵 直人、 大川 修二(翻訳)
東洋経済新報社
2005/01/28
1,890円

現在のマーケティングが直面している悩みは、
商品が過剰であるということだ。

そこで、企業がよい商品を作ることと、
消費者がよい商品を見出せることは、
ともにマーケティングのテーマになっている。

しかし、なにしろ商品は過剰なのだから、
「よい商品であること」は必要条件を満たすに過ぎず、
「売れる商品であること」という十分条件を満たす必要がある。

そうでなければ「よい商品」とて、
その生命をまっとうするのは覚束ない。

そしてここに、もうひとつの論理が入り込む余地ができた。
それは、「売れる商品」の条件として、
「新商品」であるということが分っていることだ。

そこでこの十分条件は、そこそこの必要条件を満たせば、
即座に発動される。こうして市場は新商品が矢継ぎ早に投入されて
過剰な商品環境の分厚い皮膜を形成している。

「新商品」はそれという理由だけで売れるけれどすぐに飽きられるし、
「よい商品」は分厚い新商品皮膜に囲まれて埋もれてゆく。

いま、マーケティングはこの過剰な商品環境の課題に
応えなくてはならない。

「マーケティング10の大罪」は、タイトルからしても当然、
この課題に正面から向き合っているものでなければならないだろう。

フィリップ・コトラーの手になるものであれば、なおさらだ。

・広告の効果は?と聞かれて、「広告を打たなければ、売上はもっと低調
 だったはずですと答えるしかないだろう」という指摘。

・差別化は顧客にはどうでもいいものだったり、
 画期的でもすぐに競合に模倣されてしまうこと。

・「『顧客の声』に継続的に耳を傾けるには、いったいどうすれば
 よいのか。最善の方法はオフィスで、家庭で、電話で、電子メール
 で顧客と対話を続けることだ。こうした努力を続けていけば、
 一人ひとりの顧客に適切なオファーやサービスを提供し、
 メッセージを伝えていくことができる。」

・「ある研究によると、企業に苦情を持ち込んで即座に
 解決してもらえた人は、一度も苦情を申し述べたことのない顧客に
 比べて企業に対するロイヤルティが高いという、やや意外な事実も
 明らかになっている」

・「パネルを組織することは、ターゲット顧客を正しく代表する
 フォーカス・グループを企業の内部に抱えているようなものだ」

・バーティカル・マーケティングとラテラル・マーケティング

・「インターネットを活用すれば、企業の市場調査力は飛躍的に
 向上することになる」

これらの指摘は、示唆的ではっとする視点を与えてくれる。
そこに、学ぶべきものは多い。

しかし感じるのは、何もこの本でなければ得られない
ベネフィットではないということだ。

あの、マーケティング・バイブルである「マーケティング・マネジメント」
があれば、ほとんどは気づくものたちだ。

10の大罪は、いちいちギクっとし反省させられるものだけれど、
いちいち悔い改めているわけにもいかない。

しかし、書店というマーケットに行けば、
「マーケティング・マネジメント」だけでなく、
コトラー本はごまんとあり、しかもコトラーの本を解説する本も
出るありさまで、マーケティング関連本は、コトラー・バブルと
呼んでもいいような、コトラー本過剰の様相を呈している。

コトラーもまた、出版市場のなかで、新商品であれば売れるという
過剰商品環境に加担しているかのようだ。

「10の大罪」の下手人はぼくたちかもしれない。
けれど、こうも言いたくなる。罪つくりなコトラーさんだ。

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